大判例

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東京高等裁判所 平成10年(う)843号

右の者らに対する各消費税法違反被告事件について、平成一〇年三月二七日東京地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人らから控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官三浦正晴出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

本件各控訴の趣意は弁護人石崎健一作成の控訴趣意書に、これに対する答弁は検察官三浦正晴作成の答弁書にそれぞれ記載されたとおりであるから、これらを引用する。

論旨は、原判決は、被告人柳澤のこれまでの国際的貢献や被告人らの返済への強い意志等の情状事実を考慮せずに不当に重い量刑をしているというのである。

検討するに、被告人柳澤は、我が国の消費税の課税方式が取引のすべての段階に課税する代わりに課税の累積を排除するため取引の前段階の課税仕入れに係る税を取引に係る消費税額から控除し、課税仕入れに係る控除されるべき税額が取引に係る消費税の額より過大であったときは過大分に相当する税額を還付することになっていることを悪用し、代表取締役を務める被告会社ジャスト・インターナショナルや実質的な経営者を務める被告会社ネオ・ルネッサンス・コーポレーションの運転資金等を得るために、両被告会社の三課税期間にわたって課税仕入れを仮装するなどして課税仕入れに係る税額を作り出し、被告会社ネオ・ルネッサンスについて消費税合計六九一万円余を逋脱するとともに、両被告会社について合計一億三三一〇万円余の不正な還付を受けたものである。また、被告人柳澤は、両被告会社の事業年度が異なるのに乗じ、仮装取引や仮装解約の日時等を両被告会社の事業年度の差異に応じて最も還付金が高額になるように適宜按配し、税務調査に対処するために契約書や同意書等の証拠書類を作り出すなどしている。

このように、不正還付額が多額である上、態様が計画的かつ巧妙であり、特に不正還付金の受取りは刑法上の詐欺罪に類する性質を有するものであることを考えると、各犯情は悪質というほかない。

そうすると、原判決後の返納分も含めてこれまで消費税の一部六〇〇万円が返納されたこと、被告人柳澤が事実を認め反省の態度を示し、前科前歴もないこと、被告人らは今後もなお不正還付分も含めて返納する意志を有し、その努力が期待できること、被告人柳澤はこれまで国際親善のため尽力してきたことなどの事情を十分に考慮しても、被告人柳澤を懲役二年六月の実刑に処した点を含め、各被告人に対する原判決の量刑が重すぎて不当であるとはいえない。

よって、刑訴法三九六条により本件各控訴を棄却し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 香城敏麿 裁判官 北島佐一郎 裁判官 杉山愼治)

平成一〇年(う)第八四三号

控訴趣意書

被告人 株式会社ネオ・ルネッサンス・コーポレーション

同 株式会社ジャスト・インターナショナル

同 柳澤宗夫

右各被告人にたいする消費税法違反被告事件につき、平成一〇年三月二七日、東京地方裁判所が言い渡した判決に対し、弁護人から申し立てた控訴の理由は左記のとおりである。

平成一〇年六月二五日

右被告人ら弁護人 辨護士 石崎健一

東京高等裁判所第一刑事部 殿

一、被告人らの犯情は重いものであることは、当弁護人は勿論のこと被告柳澤においても現在では自己の刑事責任を十分に認識しているところであります。当弁護人は本件事件について前弁護人に代わって弁護人を引き受けたのであるが、その主目的は過去被告人が大学学生時代からオマーン王国に興味をもち、やがてオマーン王国と日本との友好関係に今日まで貢献して来た功績があること、及び被告人は弁護人に対し消費税を全額返還する旨誓ったからであります。

二、当弁護人が引き受けた時は、本件の資料が膨大で且つ、被告人らの債権者が債権回収のため、不動産に対し競売申請がなされており国税局への返還の財源を作るため任意売却により返還金を捻出することに多大の時間が掛かったのであります。

三、当弁護人は平成一〇年二月二七日の公判日に結審する旨の打診がなされたとき、多少であっても若干の返済が可能であり、被告人の情状の立証をしたい旨申し述べ判決まで暫くの猶予を貰いたい旨申し出ましたが、四月から裁判官の異動に伴い裁判所の構成が変わること、及び検察官も異動となるので、本件のような膨大な資料を後任に引き継げない旨の会話がなされました。その結果三月二七日に判決の言い渡しとなったのであります。

四、その後被告人は、平成一〇年四月二一日には、ジャスト・インターナショナルが保管していた画家稲垣伯堂のエッチングのほぼ全部の差し押さえを国税局に申し出ました。(弁第八号証・第九号証)国税局との合意では競売に付することなく被告人の画商の経験を活かして売却予定が立った都度差し押さえの解除と販売金の納付を行うこととなっております。右稲垣伯堂は六月四日に逝去されたため国税局に対する返済が具体化する筈であります。(弁第一〇号証)なお、四月二四日には加賀市にある「ホテルルネッサンス加賀」の営業経費を切り詰めて留保して溜めた二〇〇万円を国税局に返済しました。(弁第一一号証)

五、今後の返済については、不動産に関する事業は止めて、外国人オーナーと協力して事業を進めることになっているため、被告人の犯した額は全額返済の可能性が出てきたものと考えます。

六、被告人柳澤宗夫は、大学在学時代からオマーン王国に興味を持ち一九七一年にたまたま日本航空で募集した懸賞論文に応募し、三席に入り一九七二年に念願のオマーン王国を訪問した。(弁第一二号証)その後被告人は、日本・オマーン親善協会の設立に尽力し、一九七三年九月に協会が発足した。被告人は事務局長となって親善協会の世話役となった。(弁第一三号証・第一四号証)その後親善協会においてオマーン王国と日本の交流に尽力し、種々の貢献をしてきたのであります。(弁第一五号証・第一六号証・第一七号証)特に昭和四八年のオイルショック時に日本において原油不足で日本石油ほか電力会社の窮状を知り、直接オマーンの石油大臣に会い、日本石油に原油を輸入させた功績もあります。

七、平成四年には日本文化振興会より社会文化功労賞を受賞しております。(弁第一八号証)

八、本件事件は誠に遺憾であり、一日も早く全額の弁済をさせるべきでありますが、現在債務の整理中でもあり、その返済を将来を待たねばならないと思われます。被告人の犯した犯罪の重大性は返済下からといって消えるものでもありませんが、返済準備のいとまなく判決の言い渡しをうけたものであり、その後の被告人の返済努力を考慮すれば、被告人のこれまでの国際的貢献及び返済への強い意志等被告人の情状につき事実誤認があり、その誤認により判決に影響を及ぼしたことは明らかであります。

九、よって控訴を提起した次第です。

以上

弁第八号証

<省略>

別紙1

<省略>

<省略>

(徴 202)

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